WOW -Witness Our World- Photographer Hiroshi Yamauchi
Post Colonial Trilogy Kolkata INDIA, Saigon VIETNAM, Shanghai CHINA

旧植民地首都三部作

冷戦の終焉と共に生活の価値観は疑いもなく「欧米的な」方向へと移りつつある。
自由資本主義経済の建前は、かつてそのような考えが諸悪の根源であるとされた国々でさえその理論の有用性を試行する機会を与えられている。
民主主義はかつて一党独裁が大前提であった国々で驚異的なペースで拡張を図っている。
グローバリゼーションは政治経済の理念さえも日々の市井の生活の中へ運び込んだのだ。
しかし、いくつかのアジアの都市に於いてはこれらのトレンドは決して最近始まったことではない。
イデオロギーの衝突や価値観の変化は地政的に重要であった都市では冷戦構図が形作られる前から起きており、それ故に今日にも無視できない独自の位置を国際的な地勢図の上に示している。
奇しくも現在では希少になった中央共産政権下の都市として異彩を放つ上海とサイゴン、そしてインド国内では唯一三十年以上共産党政権下で運営されている西ベンガル州の州都コルカタは、その地で暮らす人々に過去と現在の善し悪しが混ざり合った奇妙な愛着を抱かせている。
自由経済特区として最後の共産大国である中国内で確固とした地位を誇る上海。
首都ハノイから遠く離れた半島の南端で、国際市場での競争力アップの為に積極的な外資誘致を謳うドイモイ政策による潜在的な経済基盤を広げるサイゴン。
そしてかつてインド国内最大の人口を抱え、大英帝国主義と戦うインド近代史の偉人達を多く輩出したコルカタは、アジアの政治経済を語る上で特筆すべき三都市といえる。
これらの都市は欧米の政治文化的支配を経験し、傀儡ながらもそれぞれ首都として機能した歴史を持ち、独立建国を果たして首都機能が他都市へ移された後も内外に対して重要な位置を保ち続けているという点で共通している。
この三都市を、文化とイデオロギー、そして今や国際的には純粋に存在し得ないのかもしれない共産主義政権の渋々ながら不可避であるグローバリゼーションへの妥協の例として捉えるとき、その特性が垣間見られるのではないだろうか。
この三都市の路上では過去一世紀の間に訪れそして去った歴史を感じることができる。
日々の生活の中で新旧や東西の価値観は必要に応じて淘汰混合され、そのレシピは絶妙だ。
政治家や経済学者達は時としてこの三都市で起る現象を説明しきれないだろう。
しかしその混在の独自性こそが植民地時代を経験した街のみが待つ魅力であることもまた否定できない。

Copyright © 2008 Hiroshi Yamauchi All Rights Reserved.
Birography
Photo Equipment
contact